やる気はあるのになかなか就職が決まらず、現在ニート状態。。。
このままではいけないと焦りを感じてはいるが、ニートを脱却する方法が見つけられず、苦しい。。。
就職面接を受けても、面接官と話がうまくかみ合わず、いつも落とされてしまう。。。
このようなことはありませんか?
学校の勉強はできるのに人付き合いは苦手で、集団に入ると何をしていいのかわからなくなってしまうことはありませんか?
それは怠けではなく、努力不足でもなく、もしかしたら「発達障害」のせいかもしれません。
「自分は発達障害かもしれない」と気になってはいるけれど、病院に行くのは何だか怖い…。
今回はそのような人に読んでもらいたい記事です。
この記事では、『発達障害ってそもそも何なのか』『病院ではどのような検査をするのか』『その後どのような援助を受けられるのか』を現役の臨床心理士が解説します。
また臨床心理士や精神科医が、ニートやひきこもりの方に行っている、社会復帰の支援法も公開します。きっとこの記事を読み終える頃には就職へ向けて行動する意欲が湧いてくるでしょう。
発達障害かな?と思ったら
そのような人たちのほとんどは、「発達障害」が背景に潜んでいます。
ここからは、なかなか公開されることのない臨床心理士や精神科医による発達障害者の支援法をご紹介します。
その前に、そもそも「発達障害」とは何のかを説明します。
発達障害とは?「自閉スペクトラム症(ASD)」と「注意欠如多動症(ADHD)」
発達障害に代表されるものに
「自閉スペクトラム症(ASD)」
「注意欠如多動症(ADHD)」
の2つがあります。
自閉スペクトラム症
自閉スペクトラム症の人は、知能に遅れがなくても相手の意図を読み取れない、状況を判断することができず場面にそぐわないことを言ってしまう、などの特徴があります。
そのため、話すことが好きでも気づかぬうちに相手を傷つけてしまい、次第に人が離れていってしまいます。
注意欠如多動症
注意欠如多動症の人は、注意力が散漫になっていまい、物事を最後まで遂行できない、じっとしなくてはいけない時にそわそわして落ち着くことができない、などの特徴があります。
そのためミスも多くなり、人から怒られることが多いため、自信を失ってしまいます。
以上のような発達障害傾向のある人は、採用面接などで話をしたとき、「あれ?この人変だな」と思われてしまい内定に繋がらないことが多いのです。
理由もわからず何度も就職に失敗してしまう人は、一度病院で検査をしてもらうことをお勧めします。
発達障害の受診は「心療内科」もしくは「精神科」で
発達障害の鑑別診断は主に「心療内科」もしくは「精神科」の病院で受けられます。
心療内科、精神科と聞くとあまり良いイメージを持っていないかもしれませんが、最近はだいぶ敷居が低くなり、受診しやすくなりました。
初めは少しの勇気がいるかもしれませんが、気軽に受診してみましょう。
精神科病院での発達障害検査
来院する前に“発達障害の検査希望”と伝え予約を取ると、受診がスムーズに進みます。
初診は予約制の病院が多いので、受診を希望する病院がどうなのかを確認しておきましょう。
来院したらまずは、精神科医の診察を受けます。そこで、なぜ自分が発達障害だと思ったのかを話しましょう。
そこで精神科医が「発達障害の疑いあり」と判断すれば、心理検査を受けることになります。
検査方法①「ウェクスラー式知能検査(WAIS:ウェイス)」
何種類かの心理検査を組み合わせて行いますが、発達障害の査定に必須の検査は『ウェクスラー式知能検査(WAIS:ウェイス)』という知能検査です。
この知能検査は14種類の下位検査を行い、全体的なIQ(知能指数)と個人内の知能のばらつきを見て、発達障害の特徴を有しているかを調べます。
検査時間は通常1回で実施できれば3時間ほどかかり、保険適用だと3割負担の場合で1350円です(全額負担だと4500円です)。
検査方法②「問診」
心理検査のほかに、本人が成人であっても可能な限り親(母親の場合が多い)も一緒に面談を行い、本人が子供の頃の特徴について問診します。
この時に、母子手帳や学生時代の成績表などを持参すると、発達障害の鑑別診断に役立ちます。
総合評価と診断名の決定
そして心理検査を担当した臨床心理士から、検査の結果や就職するための今後の対策までを細かく教えてもらえます(病院によっては検査結果レポートをもらえる場合もあります)。
一般的な人は、知能が均等に発達するため、あらゆる能力(言語理解力、記憶力、空間認知力、処理能力など)のバランスが整っています。
しかし、発達障害の人は全体的な知能は平均的でも、知能発達にばらつきがある(得意なことと不得意なことの差が激しい)ため、日常生活に支障をきたしてしまいます。
よって、発達障害の場合、自分の特徴をしっかりと理解し、生き方が苦しくならないための方法を習得していく必要があるのです。
心理検査結果をもとに、最終的には主治医が診断名を決定し、主治医から患者に伝えられます。
もちろん、診断結果を知った段階で問題が解決するわけではないので、患者の希望により、継続的に臨床心理士による心理カウンセリングを受けることができます。
臨床心理士・精神科医によるニート・ひきこもりの就職支援
その場合、まずは臨床心理士が発達障害について詳しく説明します。
心理カウンセリングによる支援
発達障害の人は自分の特徴に気づかず、数多くの失敗を経験しているため、自分の失敗は怠けや努力不足だと思い込み、自分を責めてしまっていることが見受けられます。
しかし、発達障害の原因は生まれつきの脳の器質的異常からくるものとれており、決して怠けや努力不足ではありません。
発達障害の人は、努力しているのに周りから否定され認められず、とても辛い思いをしています。
そこで、今までの失敗は自分のせいではなく発達障害のせいであったことを説明し、自己の特性をよく理解して、自分の能力にあった就職ができるよう心理カウンセリングを通してサポートしていきます。
例えば、気分(怒りや不安)のコントロール法を身につける、あるいは生活習慣が乱れてしまう原因を見つけだし生活改善に取り組む、などを行います。
また発達障害の人は会話が一方的になってしまうことや、逆に、気にしすぎて話せないなど、コミュニケーションが苦手なことが共通しています。
こういったコミュニケーションの課題を克服することも、心理カウンセリングの大きな役目になります。
発達障害の人は得意な分野が秀でている場合があるので、気づいてもらう
これまでの話では、心理カウンセリングが問題点の改善をする場であると思うかもしれませんが、最も大事なのは、自分の長所に気付くことにあります。
臨床心理士が最も心掛けていることは、その人の強みを見つけその能力を最大限に活かせる方法を提案することなのです。
発達障害の人は、苦手なことがある反面、人より得意な分野が秀でている場合があります。得意分野をうまく活用することができれば、一般就労できる人も多いです。
また、専門性の高い仕事に就く場合、得意分野を活かすことができれば、一般的な人よりも、むしろ力を発揮することが可能な場合もあります。
実は、俳優やアーティスト、芸術家、医師の中にも発達障害の方はたくさんいます。発達障害は自分の特徴をよく理解すれば、立派な職業に就くことができるのです。
そのため、発達障害だからと就職をあきらめることはありません。
最近はニートやフリーター、または発達障害者を対象にした就職エージェントも多く存在するので、利用してみるといいでしょう。
しかしながら、中には就職にうまく繋がらないケースもあります。発達障害のために就職がうまくいかない場合、障害者枠で就職するという選択肢もあります。
精神障害者保健福祉手帳の申請方法
初めて病院を受診した日から6カ月経過すると、何らかの精神疾患(発達障害も含む)であると診断されていれば、精神障害者手帳の申請ができます。
申請方法は、主治医が記載した診断書と、精神障害者手帳申請書を市町村役場に提出します。
そこで障害者の認定がされれば、精神障害者手帳が交付されます。
障害者枠の採用を行っている企業であれば、精神障害者手帳を提示することで、障害者枠への応募が可能です。
しかし、何年間も引きこもっている人は、いきなり外に出て就職活動をするのはハードルが高いと言う場合が多いです。
なぜなら、毎朝早起きしなければならない、他人と話をしなければならない、一日中働ける体力をつけばければならなど、クリアしなければならない課題がたくさんあるからです。
その例が就労継続支援です。
就労継続支援、障害者就業・生活支援センターで就活までの心と体の準備
また「就労継続支援」を利用するのも1つの方法です。「就労継続支援」というのは、長い間引きこもっていたり、職歴のない人が仕事をするための心と体の準備をサポートする福祉施設です。就労継続支援では、利用者の体調や目標に合わせてプログラムを調整できるので、現在の状況に応じたサポートを受けることができます。
生活の面でもままならない人は、まずは生活リズムを整えるために、朝に就労継続支援施設に通い、人と会話をし、数時間過ごした後に帰るなどの利用方法も可能です。
慣れてきたら、軽作業から始めて徐々に仕事をする感覚を身につけていきます。作業時間も少しずつ長くしていきながら、就職に向けた準備を進めます。就労継続支援施設には、精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家が所属しているところも多く、通所中にはさまざまな相談に乗ってもらえます。
このように、ニートから就職するという高いハードルも、就労継続支援に通うことで少しずつ克服していくことができるのです。
また「障害者就業・生活支援センター」を利用するのもよいでしょう。就職活動をする際に、障害者就業・生活支援センターの職員が、あなたと職場との間に立ってサポートをしてくれます。
仕事が決まった場合、障害者就業・生活支援センターを利用すれば、職員が職場訪問をして問題がないか相談にも乗ってもらえます。
障害者枠で就職する
一般就労の場合は、精神的に健康であることを前提に一般の人として就職することです。
一般就労でしたら給料はいいかもしれませんが、容赦なく厳しく指導され、責任の重い仕事を任されることもあります。
精神障害者手帳を持っている場合でも一般就労は可能ですが、初めは障害者就労をお勧めします。
なぜなら障害者就労は、職歴がなく発達障害を持っている場合、いきなり一般就労を目指すよりも社会復帰の成功率が高いからです。
障害者枠で就職するメリット
障害者枠で就職するメリットはたくさんあります。
まず、雇用主が障害に対して理解があるので、無理なく働ける点が挙げられます。
スピードを求められる仕事や、複数のことを同時にこなす仕事など、苦手なことを前もって伝えておくと、負担にならないように配慮してくれます。
また福祉サービスを利用できることも障害者枠の大きなメリットでしょう。
このように、障害者枠での就労では発達障害を持つ人の弱みを配慮してもらえるので安心して働けるのです。
もちろん、自信がついたら一般就労を目指すことも可能です。しかし、初めのうちは障害者枠での就労を目指したほうが、負担が少なくニートを脱却しやすいでしょう。
まとめ
最後まで記事を読んでいただきありがとうございます。
臨床心理士や精神科医、その他の専門スタッフによる就職支援はなかなか手厚いですよね。
病院で検査を受けると、自分の特性がわかるだけでなく、精神障害者手帳を取得すれば、さまざまな専門のスタッフがあなたをサポートしてくれます。
今まで一人で頑張ってきたのに就職がうまくいかなかったあなた。
思い切って病院を受診すると、とんとん拍子で事が運ぶかもしれません。
初めの一歩が一番怖い。ですが、あなたがほんの少しの勇気で踏み出せば、きっと未来は開けます。