いつものように自分の部屋でツムツムに興じていた日夜。
いきなり母親がノックもなしに部屋に入ってきて、開口一番こう言った。
「なぜ働かないの?」
僕は膝から崩れ落ちた。
彼女は何故こんなことを聞くんだろう?いつもはそんなこと絶対に言わないのに。
こんなひどいことを聞いてくるなんて、彼女はもしかして親ではないのか?
親がこんなひどいことを聞いてくる例を僕は知らない。
だってニートに「なぜ働かないの?」って聞くのは、「なぜ戦争に行かないの?」と聞くのと同義。
子供を戦争に行かす親があるもんか。
そうか、鬼畜だ。親の皮を被った鬼畜なんだ。
僕は鬼畜を睨みつけ、こう答えた。
「理由はない。働きたくないからだ」
すると鬼畜は父親を呼び、今度はカップルで詰めてきた。
「いい加減にしなさい」「いい加減にしろ」
さすが鬼畜カップル。息ピッタリだ。
恐らくお互いの鬼畜ぶりに惹かれあったのだろう。
「いつまでそんなこと言ってるの!」
「働かないなら、この家から出て行け!」
ハタラカナイナラデテイケ・・・?
いや、ちょっと、え?
おいおいおいおい、この鬼畜達は一体何を言っているんだ?
「働かないなら出ていけ」って、それじゃあこっちが不利なことばかりじゃないか。
「働かない」というリスクを背負っているのに、そのうえ家も出ていけと?
「働かないなら生活を援護してやる!」なら分かる。「働かないならマジェスタを買ってやる!」も分かる。
ハタラカナイナラデテイケ・・・?
なんてことだ!
俺は働かない上に、家も出ていかないといけないのかよ!
もう終わりじゃないか。。。
俺はどうやって生きてけばいいんだよ。
働かずにどうやって暮らせって言うんだよ。
「働かずにどうやって暮らせって言うんだよ!」
鬼畜達は目を点にしていた。
さすがにこれはマズイ状況だ。
考えろ考えろ俺。
こういう時に頭をフル回転させる為に、高速音読してたんだろ?
こういう時に機転がきくように、DHAたっぷりの魚を摂取してたんじゃないのかよ。
今動かないでいつ動くんだよ!
「働く以外なら、なんでもやる!働く以外なら死んでもいい!だから家から出すのは勘弁してくれ!」
気づいたらそう懇願していた。
「駄目だ!」
「じゃあアルバイトをして家に3万円入れる!これでどうだ!」
ちなみにこれは今回の交渉ラインギリギリだ。
ほぼ原価で売っている。はっきり言ってこちらに儲けは無い。
「駄目だ!」「今回は本気だ」
・・・ホンキだと?
ちくしょー!!
なぜだ!!
なぜ親のくせに本気で俺にぶつかってくるんだ!
どこの親も臭いものには蓋をして生きてるじゃないか!
「臭い俺に蓋をしてくれよ!」
気がついたら主張がよく分からない言葉を口走っていた。
すると鬼畜たちは返す刀で「あなたのためを思って言っているのよ」と言った。
なぜだ!
どこの親も「世間の目が」とか、「よそ様に顔向けできない」とか、周りの目ばかり気にしてるじゃないか!
俺の為を思って言うなんて、お前それでも親かよ!
この親の皮をかぶった鬼畜め!
このままでは平行線を歩き続け、日付変更線をまたいでしまう。
泣く泣く、今回は圧力に屈し就活を始めることした。
ということで今日から僕のニート脱出日記をここに記します。