今回の『職業訓練』は、過去に職業訓練機関で講師経験を持つ方にお話を伺いました。
この記事の内容
今記事の対象者は「既卒の方で職業訓練に興味がある」方です。
「既卒が職業訓練を利用するメリットやデメリット」「申し込み方法」や「コース」「職業訓練中の過ごし方」などをご紹介いたしますので、ぜひ参考にされて下さい。
日本の就職では「新卒一括採用」の企業がほとんどであり、それぞれの職種への導入教育は採用企業の「研修」で行われています。
しかし、早期離職率の高止まりやそれを補うミドルスキル(中程度の技能を持つ)の働き手不足から、職業訓練の必要性が高まっています。
さらに、これからの情報化やロボット化の進展により、仕事に求められる技能レベルはさらに高まることでしょう。
『公共職業訓練』と『求職者支援訓練』
訓練には国や都道府県が実施する「公共職業訓練」と、民間教育訓練機関が厚生労働大臣の認定を受けて実施する「求職者支援訓練」があります。
原則として雇用保険を受給できる人は公共職業訓練の、受給できない人は求職者支援訓練の対象となっていますが、そうではないケースもあります。
職業訓練のメリットとデメリット
職業訓練を受けることは、あなたの可能性を広げるだけでなく、企業側が求める人材に近づくという大きなメリットがあります。
ほとんどの企業では中途採用には即戦力を求めています。経験不問の求人もありますが、経験者よりもあえて初心者を採用することはしないでしょう。
一方、デメリットは訓練には時間と費用がかかることです。訓練期間中はアルバイトなど働く時間が限られます。
また、受講料は原則無料ですが、テキスト代などは自己負担です。
給付金などの助成制度もありますが、どうしても自己負担も必要です。
そのほか、学習への意欲を継続させるなど、物心両面での負担がありますので明確な目標とその実現に向けた覚悟が必要です。
公共職業訓練の「施設内訓練」「委託訓練」、求職者支援訓練の「基礎コース」「実践コース」
『公共職業訓練』は、訓練校で主にものづくりを学ぶ「施設内訓練」と、委託を受けた専門学校などの民間教育訓練機関が行う「委託訓練」があります。
施設内訓練は機械工作、電気工事、建築、土木など科目が設けられていて、訓練期間は6か月~1年程度です。
委託訓練では介護サービスや経理事務、パソコンなどの科目が設けられていて、訓練期間は3~4か月程度です。
『求職者支援訓練』には、多くの職種に通じる基礎的能力を身につける「基礎コース」と、基礎的能力と各職種の実践に必要な能力も身につける「実践コース」があります。
簿記やパソコン、医療事務などの事務系や、販売、デザイン、介護などの科目も用意され、いずれも3~4か月程度の訓練期間となっています。
職業訓練の申込み方法
まずはハローワークで自分の希望する職業をもとに、地域の職業訓練校や民間訓練機関で学べる科目を相談してみましょう。
施設や科目により開講時期や期間が異なります。
また、訓練校では入校選考として簡単な筆記試験や面接が行われる場合もあります。
職業訓練受講給付金 受講手当や通所手当などの支給もある
訓練期間中に雇用保険を受けることができない人を対象に、職業訓練受講手当が支給される場合があります。
受講手当として月額10万円、そのほか訓練機関までの通所経路に応じた通所手当、配偶者などと別居して寄宿する場合の寄宿手当があります。
支給には世帯収入や資産などの条件がありますので、こちらもハローワークの窓口に相談してください。
職業訓練中の過ごし方(電気工事科の例)
電気工事科は他の科目より訓練期間が長い約11か月です。
その間に第2種電気工事士に必要な知識と技能を習得します。
このほかにも就職後に必要となる高所作業車、小型移動式クレーン、玉掛けなどの資格にも挑戦し、『電気工事技能者』や『電気施工管理技術者』『ビル設備管理技術者』などの仕事を目指すことができます。
住宅やビル等の電気工事を実際に行ったり、電柱等の電線をつなぐ工事などの仕事ですね。
入校試験では中学程度の数学などの筆記試験や面接が課せられることがあります。これは目標である電気工事士の試験に数学的能力が求められるからです。
受講料は無料ですが、各種資格の習得のための受講料や工具・教科書代などで15~20万円程度の自己負担金がかかります。
訓練は毎週月~金曜日の午前8時30分ごろから午後4時30分ごろまで行い、土・日、祝日や年末年始などはお休みです。午前は電気理論などの座学、午後は配線技術の実習、というようなカリキュラムです。
受講者のほとんどは、もともと電気についての知識や経験がない人なので、訓練も基本からわかりやすく指導を行っています。
ものづくりに関わる科目は、訓練が進むにつれて自分の技能の高まりを実感することができます。始める前には難しく思える目標でも、徐々に力をつけていくことで、ほとんど人が資格を得ることができます。
また、国家資格である電気工事士は求人件数も多く、ほとんどの人が電気工事業に就職することができます。将来の独立開業も目指すことが可能です。
フリーターやニートと職業訓練
まずは職業適正検査を受けて、まずは目指す職種を考えましょう
職業訓練は就職に必要な技能や知識を習得することで、早期就職につなげることができる支援です。しかし、いくつか注意することがあります。
まず、自分がどのような職業に向いているのか「適性」を知らなくてはいけません。単に給与の高さや就職のしやすさなどではなく、仕事と真正面から向き合いましょう。
ハローワークでは職業適性検査を受けることができるので、目指す職種が判らない場合は利用してみましょう。
次に、職業訓練は時期により募集科目が変わります。また、科目によっては早めに定員に達してしまうことがありますので、ハローワークの窓口でいつどのような科目が、どこで募集されるかを調べておきましょう。
そして、なにより訓練への覚悟が一番必要です。大げさな言い方ですが、科目によっては国家資格を受験するなど、合格のためには相応の努力が必要になる場合もあります。受講すれば必ず就職できるわけではありません。
最初は苦しくても知識や技能が身につくことでやりがいや、受講生同士の仲間意識も生まれてくるはずです。単なる技術習得だけではなく、職業意識やコミュニケーションも身につけましょう。